アルミ缶の上にたくみかん

アルミ缶の上にたくみかん

日本百名山を中心に単独登山やドライブなどを書いた日記です。

【36/日本百名山】2018年8月12日 立山~母との仲直り登山~

ー母は強しー
そんな言葉を実感したのはいつのことだろう。
大人になってからかな。

山に登る醍醐味は絶景。
そんな自分にとって晴れという天気は絶対条件。
特に人を連れて行くときは慎重になる。

そんな自分が曇りという天気の中、どうしても母を連れていきたかった理由は一つ。
一刻でも早くこのわだかまりを解消したかったから。前みたいに話したかったから。

ことの発端

2017年4月某日。愛煙家である父の依頼で仕事終わりに銀座で買い物をしていた。
銀座といっても大したものじゃない、icosの新作フレーバーだ。
父にはいいように使われる。自分が面倒と思うことはすべて長男である自分に来る。
祖母の墓参り、庭の草むしり。どうやっても相続人にはなれないのに。
少しでも申し訳なさそうに言えばいいのにいつも王様みたいに言われる。
そんな扱いに嫌気がさし、いつからか頼まれるごとに手数料をとっていた。
この日もそんな感じでタバコをお願いされた。手数料として1000円を徴収していた。
そして暗黙の了解で釣り銭700円ももらっていた。

買ってきたタバコを父に渡したある晩、母が釣り銭を父に返したかと聞いてきた。
もちろん答えはNOである。それに対していつになく母は「そんなもの返しなさい」と言った。
それがこの一年、母と話さなかった理由だ。

母と父は仲良くない。 自分の考えていることを言わずに、責められればいつも無視して逃げる父に母は嫌悪感を示していた。
母と出かけるときはいつも父の愚痴である。
そういうこともあり母は父の肩を持たないと思っていた。
だがしかし、今回の釣り銭を返しなさいという母の口調は完全に父の肩を持っていた。

信頼していた母が父の肩を持った。
その裏切られた感が凄まじい現実に自分は母に対する信用を失った。

以来、今日まで母と口をきくことはなかった。
いつもコミュニケーションはLINEでとっていた。
しかも敬語で。

山登りへの誘い

母を山に誘ったのは自分だ。2016年GWに大山へ誘い、それから
男体山金峰山、富士山、天城山と登った。
お世辞にも運動神経は良いとはいえない母はとにかく負けず嫌いで少し頑固だ。
きつくても登るという。今思えばそういう精神で初心者ながらも
霧の中、きつい傾斜、がれ場、残雪の山も踏破してきた。
自分が誘ったことでザックやストック、登山靴まで買ったものの、口を利かないこの1年で
道具はホコリを被って納戸スペースに放置されていた。
母は独りでは絶対に登らない。
お金にシビアな母がそのために道具を買ったというのは意外だった。
だからこそ余計に山頂からの景色を見せたかった。

立山のきっかけ

あまり漫画は読まないけど、「山と食欲と私」というヤマメシ漫画は大好きで全巻買っている。
毎回フィールドが変わってそこで作るヤマメシとそれを食べる主人公が楽しそうで仕方ない。
その第6巻で主人公が母を連れて立山に行くというのがあり、ここなら良いかもと思っていた。

立山について

立山北アルプスの中で特に人気の山であり、日本百名山の一つ。
標高3003mの雄山、3015mの大汝山、剱岳と同じ2999mの富士ノ折立の3つピークを総称して立山という。
氷河が残っている希少な山であり古くから山岳信仰の対象とされ、雄山神社は白山、富士山とともに
日本三霊山の一つとなっている。

母にとってははじめての日本アルプスであり、御朱印をもらえるので絶対に連れて行きたかった。

出発

12日、午前0時に母と出発した。目指すは長野県扇沢駅である。
黒部立山アルペンルートはマイカー規制が施行されている。
車で行けるのは関東からだと扇沢駅までであり、そこからトロリーバス、ケーブルカー、ロープウェイ、トロリーバス
登山口の室堂駅まで向かう。
圏央道、中央道、長野自動車道を経て午前4時過ぎに扇沢駅に到着した。
すでに車はかなりの台数が止まっていて自分たちも駅に近い有料駐車場(24時間1000円)に停車した。
f:id:tacumix:20180814102451j:plain
扇沢駅は一般的な駅ではないのでカーナビの名称検索は使えない。
駅自体も山の中にあり、星がきれいだった。

チケットの販売開始が5時半からだったので5時に起床するということで車で仮眠した。

f:id:tacumix:20180814103120j:plain
f:id:tacumix:20180814103032j:plain
山の中にあるとはいえど、駅は大きい。

f:id:tacumix:20180814103203j:plain
5時についてみればもうご覧の行列。
人気って怖いね。。。

f:id:tacumix:20180814103613j:plain
その最後尾に並びチケット購入まで待機する。
販売開始するとスタッフが購入は代表者だけにしてくれというので母には先に
駅に並んでもらっていた。結果としてこれが一番効率が良く最初の便で乗れた。

f:id:tacumix:20180814103754j:plain
後ろ側には山。雲がかかっている感じがいい

f:id:tacumix:20180814103839j:plain
ここ立山黒部アルペンルートトロリーバスは日本で唯一のトロリーバスらしい。
トロリーバスとはトロリー線から流れる電気で走行するバスで、見た目はバスだが法律上は
電車になるらしい。
f:id:tacumix:20180814104105j:plain
こんな感じの架線の下を走行する。
そのトロリーバスが今年で終了らしく、来年から電気バスに変わるようなのだ。
ちょうど良いタイミングだったかもしれない。

f:id:tacumix:20180814104219j:plain
トロリーバスの始発を待つ。 4レーンあるが改札は同時なのでどこに並んでも同じである。
立山に行く人の他に、黒部ダムに行く人もいるのでものすごい人の数である。

f:id:tacumix:20180814104343j:plain
バスには座れてふたりとも窓が見られる独り座席を確保したものの、このトロリーバス、16分の間トンネルを進むのであるw

f:id:tacumix:20180814104518j:plain
トンネル工事は難航を強いられたようで破砕帯と呼ばれる区間にぶちあたったときに
地下水がものすごい出てきたらしくわずか80m掘るのに7ヶ月を要したとのことだった。
その破砕帯の区間は青色のネオンで示されている。

黒部ダム

f:id:tacumix:20180814105449j:plain
黒部ダム駅に到着した。

f:id:tacumix:20180814105520j:plain
駅からは60段の階段を降りダムへと向かう。
地下水の影響かトンネルの中は寒いくらい冷え込んでいる。

f:id:tacumix:20180814105628j:plain
トンネルを抜けると世界最大級にも匹敵する黒部ダムの真上に来る。

f:id:tacumix:20180814110221j:plain
f:id:tacumix:20180814110232j:plain
向かって左側は人造湖である黒部湖。

f:id:tacumix:20180814110619j:plain
f:id:tacumix:20180814110630j:plain 上にはダム建設時に使ったクレーンの基礎がある。
要塞みたいだ。
そして展望台の人々。

その視線の先には

f:id:tacumix:20180814111420j:plain
黒部ダム
youtu.be
水の量からものすごい音がしていると思えばそんなことはなく、静かである。

f:id:tacumix:20180814111508j:plain
ちなみに落差は186mある。

youtu.be
上から撮ってみた。

ケーブルカー

このケーブルカーはあくまで急斜面を登るためのもので5分間ずっとトンネルである。

f:id:tacumix:20180814111726j:plain
f:id:tacumix:20180814111750j:plain
f:id:tacumix:20180814111802j:plain
自分たちより後ろに並んでいたおじさんがガツガツ我先にと乗り込もうとして鬱陶しかった。
こういうのが山道でも道を譲らないんだろうなと思うと悲しい。

ロープウェイ

f:id:tacumix:20180814120259j:plain
ロープウェイ駅を降りるとすっかり晴れ間になっていた。
後立山連峰

f:id:tacumix:20180814120350j:plain
f:id:tacumix:20180814120406j:plain
このロープウェイには驚いた。全長1.7km、上の駅との標高差500mあるのに
支柱が1本もない。。。
よくこれでゴンドラと人が乗れるよなと感心した。

室堂

f:id:tacumix:20180814120645j:plain
ロープウェイを降りると再びトロリーバスに乗って室堂へと向かう。

f:id:tacumix:20180814120656j:plain
そして室堂駅に到着。

f:id:tacumix:20180814120707j:plain 生憎のガスだが人はわんさかいる。
そしていよいよ母との登山が始まる。

登山開始

f:id:tacumix:20180814120911j:plain
8月というのにまだまだ残雪があるというのが北アルプスらしい。
さすがは立山だけあって道が舗装されている。
歩きやすい。

f:id:tacumix:20180814121038j:plain
振り向けばホテル立山
排ガスもないこの山は晴れた日は星が凄いんだろうな。
今度は泊まりで来てみたい。

f:id:tacumix:20180814121132j:plain
立山方向にはもう一つ大きなホテルがある。

f:id:tacumix:20180814121304j:plain まだまだ余裕の母。

f:id:tacumix:20180814121423j:plain
少しずつだがガスが晴れ始めた

f:id:tacumix:20180814121511j:plain
雪渓。一部は登山道にもかかっておりこの上を歩く。

f:id:tacumix:20180814121626j:plain
f:id:tacumix:20180814121632j:plain
少しずつまた視界がひらけてきた。

f:id:tacumix:20180814121755j:plain
f:id:tacumix:20180814121806j:plain
しかし上に上がれば上がるほどガスが濃くなっていく。
そして勾配で疲れ始める母。
眺望もよくないし申し訳なく思ってきた。

f:id:tacumix:20180814122020j:plain
そして一の越に到着。
そう、今日はTJAR2018がスタートした日である。時間的に選手とすれ違うこともあり
応援で登っている人が大勢いた。
ちなみにTJARとはトランスジャパンアルプスレースの略称で、その名の通り選ばれし40名が
1週間かけて日本海から北アルプス中央アルプス南アルプスを経て太平洋までの400kmを進むレースである。
大会は2年に1回行われておりちょうどこの日がレースだった。
母も「激走!日本アルプス縦断レース」という2012年大会の本を読んでおり、その存在と
望月さんの存在を知っていた。

もう間もなく選手を見られるという興奮状態になり足が進むものの吹上が寒い。

f:id:tacumix:20180814122628j:plain
f:id:tacumix:20180814122835j:plain
立山の取り付きはものすごく傾斜がきつい。
ゆえに渋滞がひどく余計に寒かった。

f:id:tacumix:20180814122930j:plain
登りが苦手な母もその歩みが遅くなる。

そして、
f:id:tacumix:20180814123020j:plain
山頂直下でこのとき1位だった選手が降りてきた。
自分にとってこのビブスはツール・ド・フランスマイヨジョーヌ的に憧れており
鳥肌が立った。
深夜0時にスタートして剱岳を進んできたのにこの余裕の表情は人間業ではない。

f:id:tacumix:20180814123241j:plain
そして山頂に到着。
ガスが酷いこと。

f:id:tacumix:20180814123504j:plain
ここが雄山神社社務所
あったかい。

f:id:tacumix:20180814123554j:plain
御朱印というのは本来なら参拝してからその証明書としてもらうのが普通らしい。
だが、そんな時間がもったいないので先に御朱印をいただくことにした。
日本三霊山の文字がある。

f:id:tacumix:20180814125842j:plain
雄山到着! f:id:tacumix:20180814130253j:plain
パンパンになったポテトチップス

f:id:tacumix:20180814125949j:plain
パンパンになった私。標高高いとこうなる運命。

f:id:tacumix:20180814130034j:plain
f:id:tacumix:20180814130045j:plain
しかし、本当の山頂は神社である。
500円の登拝料が高いということになり行くかどうか迷ったが、
もう来ることはないかもしれないということで行くことにした。

f:id:tacumix:20180814130210j:plain
立山のヌシカンさん。

f:id:tacumix:20180814130352j:plain
もう母がきつそうなので雄山で下山することを提案したが、
せっかくだからと富士ノ折立まで行ってくれることになった。
大汝山に向かう途中で2番手の選手の通過待ち。
このレースを見て買ったOMMのザック。
当然、TJARの選手も使っていた。

f:id:tacumix:20180814130851j:plain
そして20分くらいで大汝山登頂。

このまま富士ノ折立にも向かう。

f:id:tacumix:20180814131010j:plain
富士ノ折立は険しかった。
ガスの中にあって傾斜もあり厳しく母には登らせるのは危険だったので自分だけ行ってきた。
これで立山を登頂した。

下山

そしてフェーズはラストの下山を残すのみとなった。

f:id:tacumix:20180814131219j:plain
雄山に着いた頃には先程よりもガスが晴れていたが同時に人が増えた。
先に御朱印をもらったのは正解だったかもしれない。

f:id:tacumix:20180814131316j:plain
行きにはスルーしていた一等三角点にタッチする。

下山は下山で大渋滞だった。
母も私も疲労がピークになったころ、この人の登場で一気にテンションが変わった。
f:id:tacumix:20180814131428j:plain
TJAR史上、伝説の男、望月選手である。
静岡の消防士で南アルプスなどで山岳救助をやっているらしい。
2010年高いから4連覇しているすごい人である。
今年はやけに順位が遅い。どうやら今回は優勝狙いではなくエイドを自給自足ということらしい。
おそらく山小屋などで水分や食料を買わないという意味なのだろう。
またしても伝説を作る気だ。

f:id:tacumix:20180814131823j:plain
下山時はほんの一瞬だけ晴れた。

f:id:tacumix:20180814132121j:plain
すっかり様になっている母である。

f:id:tacumix:20180814132225j:plain
一の越についたときには上は晴れそうだった。

f:id:tacumix:20180814132508j:plain
標高を下げるほど晴れている。みくりが池も見える。
f:id:tacumix:20180814132611j:plain
一瞬でもこの景色が見られてよかった。

f:id:tacumix:20180814132727j:plain
降りてきた時には立山も今日で一番顔を出していた。

f:id:tacumix:20180814132926j:plain
帰りのロープウェイから見る黒部湖。

f:id:tacumix:20180814133022j:plain
お土産さんで見つけた面白い器。

f:id:tacumix:20180814134902j:plain 最後は晴れてきた穂高連峰

最後に

ちゃんと会話できるか、タメ口で話せるか。そんなしょうもない不安で望んだ今回の山行。
しかしながらそんな不安は問題なく、行きの車からたくさん話せた。
久しぶりに「お母さん」と呼ぶのは照れくさかったけど。
仕事のこと、ルルのこと。 だけど特に親だからといって母は干渉しようとしない。
未成年のときはうるさく言っていたけど成人してからは本当に何も言わなくなった。
すべて自分のやりたいようにやれと任せてくれている。
ただ、自分が家庭を持つならちゃんと奥さんへの感謝と気遣いはするようにと言われた。
それはこんな父親に嫁いでしまったことを反面教師にしてくれとのことかもしれない。
母は母自身の不幸さをわかっている、その上で妹やルルを含めた自分たちへは最大限の努力をしてくれていた。
人生一度切り。
当初描いた生き方とは全然違かったかもしれない。
それでも不自由なく生活させてくれたことは大変感謝している。
親の存在は大きい。子は親を選べないとは言うけれど、この母のもとに生まれ育てられたことは誇りに思う。
家庭を持つかはわからない、持てないかもしれない。
だけど母の苦労を知っているから絶対に自分は家庭を大事にしたいと思っている。
それが育ててくれた母への恩返しになるのかな。

年々、母も歳を取っていくなかでいずれは走るのをやめる日も、山登りをやめざえるを得ないときもくるだろう。
ずっとは無理だろうけど、こうやって誘えるときは誘っていけたらと思う。

まあこんなこと恥ずかしくて絶対に面と向かっては言えないけど。

ありがとう。